MTGプレイヤーの目線から見た「バンドリ!」~5つの色と5つのバンド~

☆はじめに

 (2019/6/20編集)

 初めましての方は初めまして。私はTwitterで主にカードゲームとか百合とかの話をしている妖精からっぽまる(@Cotswolds0405)という者です。そして今回のブログ記事は、まさしくカードゲームと百合のコンテンツを結びつけたものです。

 突然ですが皆さんは『バンドリ!ガールズバンドパーティ!(ガルパ)やってますか。リリース2周年に伴うアップデートで、ついに女と女の会話を聞くこと以外何も出来ない部屋に監禁されるシステムが導入された平成最後にして最強の百合ゲームとして有名なガルパです。もしもやっていないなら、今すぐインストールしてください。なんと今はサービス開始2周年を記念して、二日間ログインするだけで20連ガチャ分の石が貰えるスペシャルキャンペーン期間をやっています。しかも3/19の14:59まで最高レアの出現率が2倍のガチャをやっています。つまりリセマラし放題で、カードの数の上でも充実した状態でゲームを始められるわけです。アニメ2期の放送と重なっているからこその超好条件で、3周年がここまで素晴らしいかは保証できません。なので今すぐ始めるんだ!

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 そしてこれまた突然ですが、皆さんは『マジック・ザ・ギャザリング』(MTG)という人類最古のトレーディングカードゲームをご存知でしょうか。最近は深夜アニメの放送時にCMをやっているので、あーあの絵が怖いやつね、ぐらいの認識はしている方もいるかと思います。実はこのマジック・ザ・ギャザリング、現在『マジック・ザ・ギャザリング:アリーナ』という基本無料で遊べるPC用ゲームがリリースされています。無課金~微課金でもガッツリ遊べる上に懇切丁寧なチュートリアルがあり、おまけに日本語化されているのです。何かと「難しそう」「カードが高いんでしょ?」と言われがちなゲームのイメージが完璧に払拭されるので、騙されたと思ってダウンロードしてください。奥深い戦略性とデッキ構築の多様性にきっと夢中になりますよ!

mtg-jp.com

 さて、私がこれら二つのコンテンツを同時に宣伝したのは、別に狂っているからではありません。むしろ明確な脈絡があります。なぜならバンドリ!ガールズバンドパーティ!』と『マジック・ザ・ギャザリング』は実質的に同じだからです。

 まず前提知識として把握していただきたいのですが、『MTG』のカードには「白」「青」「黒」「赤」「緑」――5種類の「色」があります。『デュエル・マスターズ』とか『WIXOSS』とかの後発カードゲームでも受け継がれている、得意な戦略や背景世界における思想を分類した概念ですね。そしてそれぞれの色に割り当てられた特徴そのものを、「カラーパイ」という用語で表現します。

カラーパイ - MTG Wiki

 多分一番わかりやすく纏まっているのはMTG Wiki様のこの記事です。大まかな特性が記載されていて、下の方にはより詳しい情報に踏み込んでいる公式記事へのリンクがあります。本格的に説明していると別の記事が合計で25本ぐらい出来てしまうので、当記事では私が噛み砕いた上での基本的な説明に留めておきます。興味を惹かれた人は公式の文書も読んでみてください、面白いので。

 そして話は変わって、『バンドリ!』の世界には、「ハロー、ハッピーワールド!」(ハロハピ)「Pastel*Palettes」(パスパレ) 「Roselia」(ロゼリア)「Afterglow」(アフグロ)「Poppin'Party」(ポピパ)という5つの異なる音楽性を持ったバンドが存在し、互いに影響を及ぼしつつ独自性を保ちながら活動しています。

bang-dream.bushimo.jp

 そして薄々そういう話が展開されるのが読めている方もいるかもしれませんが、『MTG』の5色と『バンドリ!』の5バンドは奇妙なほど〝符合〟しているのです。ブシロードは5色系カードゲームにほぼ手出ししてないのにフシギダネ

 ちなみにここからは長くなるので、せっかちな人はこの結論だけ覚えて帰ってください。MTGとバンドリは実質同じ」「なのでMTGとバンドリを一緒に始めてくれ」。

ハロー、ハッピーワールド!と「白」

 これより、『MTG』における標準的な色の並び順に沿ってバンドと色の符合を例示していきます。トップバッターである「白」は平和を重んじ、すべての人々が幸福になれるだけのリソースが世界にあると信じています。社会を守る防御的な側面を強く持つ一方で、軍隊を組織し集団戦を得意とする色です。白は持てる者が持たざる者に分け与えること、一枚岩の信念を掲げることを重要視します。

 『バンドリ!』で同じニッチを占めているのは「ハロー、ハッピーワールド!」です。篤志家の令嬢・弦巻こころによって集められた彼女たちは、「世界を笑顔に!」という白の思想そのものと言える目標を掲げて活動しています。その最初の衣装はマーチングバンドを模した正しく軍隊的なモチーフで、行進曲のイメージを取り入れた楽曲は周囲と手を取り合い世界をひとつに結ぶことを詞で訴えます。興味深いことにハロハピにおいては作詞すらも一人で為されるものではなく、こころの漠然としたイメージを無二の相談役である奥沢美咲が明確な文章に落とし込む形で行われています。

 バンドストーリーにおいて、ハロハピは入院中のスポーツ少女の笑顔を取り戻したり、閉鎖寸前の遊園地を救うために奮闘します。彼女たちを突き動かすのは誰かの「ヒーロー」でありたいという想いであり、時に自分自身の存在意義を見失った時でさえ、他者のエールを道しるべに笑顔を取り戻すことができます。輝かしい利他と協働の精神は、白が追求する美徳と同様のものです。

Pastel*Palettesと「青」

 「青」が希求するのは完璧になることです。それは白や黒が定める目標のように明確な終了地点があるものではなく、理想に向けた絶え間ない発展です。青はあらゆる人が適切な努力を行えば望む存在になることが可能と考え、そのために必要な知識の蓄積や術策の行使に余念がありません。長期的視野を持つために短期的には消極的に振る舞うことも多いものの、常に着実な進歩を求めて水面下で動いている色です。

 『バンドリ!』において青と対応するのは「Pastel*Palettes」になります。彼女たちは5バンドの中で唯一の(作中の世界観において)商業バンドにしてアイドルバンドです。パスパレのリーダーである丸山彩は、非常に強固な理想のアイドル像を持っています。彼女は努力が必ず夢への扉を開くと信じて邁進しており、青の創造的な側面を体現します。一方で青の理知的な側面に接近しているのがベーシストの白鷺千聖です。彼女は芸能界を知悉した子役出身の若手女優であり、かつてはパスパレでの活動がもたらすリスクに難色を示していました。しかし紆余曲折を経て、現在はその蓄積された知識と狡猾さをバンドの未来を守るためにうまく運用しています。

 バンドストーリーにおいて、パスパレは事務所の意向によって唐突に結成され、当初は当て振りで観客を誤魔化す方法を取っていました。しかし機材トラブルによって欺瞞が暴かれると、スタート直後からバンド活動は苦境に立たされます。どん底の状態から遠い理想像へと少しずつ歩を進め、無計画な事務所のスタッフや想定外のトラブルに機知で対処していく彼女たちの物語は、青のしたたかさを教えてくれるでしょう。

Roseliaと「黒」

 「黒」が考える絶対の価値はです。黒は自分自身と、他の色も含めた世界のあらゆるものが利己的な存在だと捉えており、個人の利益が衝突する中で己の目的を実現させるために不可欠な強さを求めています。黒は社会的な正義や道徳的な制限が邪魔ならば平然と無視しますが、黒すなわち悪というわけではありません。ただ他の色よりも極端に実用主義で、自分のためになるあらゆることに躊躇がないだけなのです。

 『バンドリ!』の世界に存在する「Roselia」は、この上なく黒の主張が強い集団です。頂点に立つため結成されたこのバンドは、誰にも負けない圧倒的な演奏技術を志向しています。リーダーの湊友希那以下、多くのメンバーはバンドを自らの能力や価値を最大化する手段として認識し、個の強さがRoseliaという群の力に寄与しています。彼女たちが奏でる音楽は重厚な暗黒の世界観を前面に押し出しており、友希那自身が紡いだ歌詞と力強い歌声は聴衆の野望への挑戦と苛烈な覚悟を喚起します。

 バンドストーリーにおいて、Roseliaは友希那の復讐心によって始まり、幼馴染である今井リサを除いた他のメンバーはその事情を知りませんでした。やがて友希那の利己的な行動によってバンドは崩壊寸前に至りますが、そこで自分自身の真意と集まったメンバーの価値を再認識することが再建の糸口となったのです。Roseliaの物語を追うことで黒なりの組織の在り方、そして絶対に逃れられない「自己」との向き合い方に触れられるはずです。

Afterglowと「赤」

 「赤」が何よりも大切にしているのは自由です。赤はその感情や衝動的な行動への抑制を嫌い、やりたいことをやりたいときに行います。自分第一という点では黒と似ていますが、赤は自分の利益ではなく気持ちを最優先します。だから一緒に居て楽しい友人や恋人に報いたり、逆にいけ好かない相手に全力で反抗したりする時には、損得勘定が介在する余地がありません。またカードではあまり描写されていませんが、芸術性や明敏な感性を司る色でもあります。

 『バンドリ!』の世界で赤に相当するのは「Afterglow」です。Afterglowのメンバーは全員が同じ学校に通う幼馴染同士です。ギターボーカルである美竹蘭がクラス替えによって孤立してしまった事件を切っ掛けに作られたAfterglowにとって、他の何にも縛られることなく、同じ時間を「いつも通り」に味わうことこそが理念です。その楽曲は前のめりで全力投球のロックと5人で過ごす時間の楽しさを素直に歌い上げたポップに大別されますが、いずれにも熱い血が通っています。

Afterglowのバンドストーリーでは、華道の家に生まれた蘭と現在の家元である父の間の葛藤を起点に物語が始まり、彼女たちの「いつも通り」の意味合いが段階的に変化していきます。その過程でお互いを情熱的に想い合うあまり、時にすれ違い、大声で叫びながら喧嘩をしたり、涙を眼に溜めながら逃げ出してしまったりするのが彼女たちです。その一方で、楽しい時間は思い切り楽しみます。制御できない感情を滾らせながら、瞬く間に過ぎていく青春の時間を駆け抜けるAfterglowは、紛れもない赤の体現者と言えます。余談ですが、赤には『稲妻』という有名な呪文があります。そしてAfterglowのシンボルも稲妻なのです。

☆Poppin'Partyと「緑」

 「緑」の世界観は受容を基盤としています。それは世界のありのままの姿を愛することであり、自分自身に運命づけられた役割を受け入れることです。緑は自然や動物と強く結びついており、生命のうねりと生態系の果てしない循環を祝福します。優しい調和や癒やしの側面と、激しい本能の側面が緑には矛盾なく同居します。世界があらゆるものの相互依存的な関係で成り立っていると緑は理解しており、万物の調和が人為的に破壊される際には抵抗するでしょう。また、過去を非常に尊重する色でもあります。

 そのイメージカラーがピンクであるにも関わらず、Poppin'Partyは緑と非常に高い親和性を持ちます。ギターボーカルの戸山香澄が幼少期に夜空を見て感じた「星の鼓動」のキラキラドキドキを源流とするこのバンドは、歌うこと、奏でること、そして聴衆とバンドが一つの輪/和/環になることの原初的な喜びに満ちています。彼女たちが宿す季節の巡りや人の繋がりへの鋭い感覚が、朗らかな純朴さと胸を打つような切なさを巧みに織り交ぜた歌を引き出すのです。

  Poppin'Partyは運命に導かれるかのような結成の物語を経て、二つの物語に関わりました。バンドストーリーの第一章では、商店街のお祭りを廃止しようと企む役所との戦いが描かれました。一方で全てのバンドが共演するメインストーリーでは、あまりにもバラバラな理念を持つ他の4バンドを協調させるために重要な役割を果たします。奇しくも、緑はMTGにおいて呪文を唱えるために必要なポイント=マナを操るのに長けた色であり、中には他の4色のマナを生成できるカードも存在します。土着のものを守るため戦うという点でも、五色を受容し結びつけるという点でも、彼女たちは緑そのものです。なお3/17現在、Poppin'Partyのオリジンストーリーにあたるアニメの第一期がyoutubeで公式配信されています。「ポピパは緑である」ということを念頭に置くと、ファーストインプレッションで噛み砕きづらい箇所をクリアした上で美味しさを楽しみやすいと思うので、是非見てみてください。ちなみにアニメの2期は1期と地続きの時間軸に連なる正当な続編ですが、作中の時系列はガルパにおける「シーズン2」にあたるので、2期の視聴前にはゲームをある程度進めて「バンドストーリー1章・2章」を先に読むことをオススメします。

www.youtube.com

 ☆まとめ

 以上が、自分がバンドリ!MTGの間にある符合を語る時に基本となる考えです。正直なところ、この二つのコンテンツはあまりにも深淵が遠く、やろうと思えば無限に掘り下げることが出来てしまいます。なのでこの記事ではスタート地点をおさえつつ、どちらか一方を知っている人にはもう片方を紹介し、両方知らない人には一緒に始めれば両方すんなり入ってきますぜ?という教示を行うのを目的にしました。

 それとこれは持論なのですけど、バンドリ!における百合カップリングのスタイルってめちゃくちゃカードゲームのデッキ構築っぽいんですよね。組み合わせは多種多様で、王道のデッキは勿論強い一方で意外な組み合わせにも魅力がある。5バンド25人という枠が存在する中でイベントごとに少しずつカードプールが増えていくので、常に変化が起き飽きない。そして強いプレイヤーが発見した新しい構築が環境を揺るがす緊張感(アニメ2期でも有力なカップリングが現れてきています!)――そんな自由度の高さと変化の楽しさが通底しているので、バンドリ!MTGのファンはわりと共存しやすい属性なのではないかと私は感じています。

 最高に始めやすい今のタイミングに、ちょっとでもMTGバンドリ!両方のユーザーが増えてくれれば幸いです。さあ、あなたも多元宇宙を股にかける新人スタッフ(壁)になりましょう。

▼おまけ:バンドリ25人25色

 ここでは自分が考える、ガールズバンドパーティのメンバー25名それぞれがMTGのカードだったらどんな色の組み合わせになるかを列挙します。あまりに長大になるので説明は省いています。また飽くまで私の解釈です。ただ、MTGともガルパともそれなりに真剣に向き合っているので精度にはそこそこ自信があります。(オリジンが不明でまだ隠し札がありそうな花音以外は……ちなみにこの記事の第一版では彼女を青単と評価していました)また色の並び順は個人的に「この色の要素が濃い」と思う順です。なぜそう判断したのか、という根拠が気になったらガルパを遊んで考えてください。もしくはTwitterで聞いてくれたら答えるかもしれません。

ハロー、ハッピーワールド!

こころ:白赤 美咲:白青(後にタッチ赤) はぐみ:白緑赤 薫:赤青 花音:青単(後にタッチ白)

Pastel*Palettes

彩:青赤 千聖:青黒白 日菜:青緑 麻弥:青緑白 イヴ:白赤青

Roselia

友希那:黒緑 リサ:緑白 紗夜:黒青 燐子:黒白 あこ:赤黒

Afterglow

蘭:赤 モカ:緑赤青 つぐみ:白 巴:赤緑 ひまり:赤白

【Poppin'Party】

香澄:緑赤 有咲:緑黒白 りみ:緑 沙綾:緑白赤 たえ:緑青